私が音楽ブログを書いていて、検索からたびたび「これは誰の曲ですか」と聞かれるアーティストがいます。TikTokやYouTubeのショートでBGMとして流れている、独特のウィスパーボイスと、肩の力が抜けたヒップホップ・トラックの組み合わせ。それがどんぐりずです。
メンバーは森(もり)とチョモランマ(通称チョモ)の2人組で、実家が徒歩数秒の距離にあったという幼馴染同士。担当パートは森が「早口坊主」、チョモが「変態毒キノコ」という独自の表記で、ジャンルもヒップホップというより、もはや「どんぐりずというジャンル」と表現したくなるくらい、ほかに似ているアーティストが思い当たりません。
今回はそのどんぐりずの結成から、代名詞となった「NO WAY」、フジロックの深夜帯で入場規制が出たというライブの強さ、そして所属レーベルとしてのビクターエンタテインメントとの関係まで、私が記事を書きながら惹かれた箇所を整理しておきます。
どんぐりずはどんな2人組?森とチョモの幼馴染と2020年デビューの始まり
どんぐりずは、森とチョモランマの男性2人組によるユニットです。お互いの実家が徒歩数秒の距離にあったという、絵に描いたような幼馴染で、ふたりとも子どもの頃から音楽に触れて育ってきた経歴を持っています(出典:Wikipedia「どんぐりず」・2026年5月確認)。
2020年にビクターエンタテインメントから本格的に活動を開始し、デビュー曲「jumbo」をリリースしてからは、ライブハウスや夏フェスのステージに次々と進出していきました。ジャンルとしては「ヒップホップ」と分類されることが多いのですが、彼らの音楽性はそれだけでは説明しきれません。フォーキーで脱力したメロディと、独自の韻の踏み方、低音域のトラック、変態的な歌詞世界が混ざり合った、ほかに類例の少ないサウンドです。
私が記事を書きながら聞き返して感じたのは、ジャンルの境界線が曖昧になりつつある2020年代に、もっとも「ジャンル名の付けにくいユニット」のひとつとして登場したのが、どんぐりずだということです。フェスのラインナップに名前があると、HIPHOPステージにも、ロックステージにも、レイトナイトのエレクトロステージにも、なぜか自然と混ざる。これはひとつの強さです。
2人の関係性も独特で、息のあった呼吸感がそのままトラックに乗っているのが、ふつうの新人ヒップホップグループとの違いを生んでいます。「幼馴染がそのままユニットになった」という背景がそのままサウンドの空気感に出ている、というのは、本人たちにとっては当たり前のことなのかもしれませんが、外から聞くとなかなか独特です。
どんぐりずの代表曲は?NO WAYとjumboとマインド魂の実力
どんぐりずを語るうえで、いちばん大きな存在感を持つのが「NO WAY」です。YouTubeでの累計再生回数が1000万回を超え、ショート動画やSNSでも繰り返し使われた、彼らの代名詞的なナンバーです(出典:Wikipedia「どんぐりず」・2026年5月確認)。
「NO WAY」のサビは、力の抜けたウィスパー気味の歌唱で「NO WAY 〜」とだけ繰り返す、というある種の極端さで成立しているのですが、これが不思議なくらい中毒性があります。ヒップホップらしい強いキックの上に、ふわっと乗る歌声と、ローファイなギターのラインが絡んでいて、聴き終わったあとも頭の中で再生され続けるタイプの楽曲です。
デビュー曲「jumbo」も、彼らの音楽性のひとつの起点として外せません。タイトルどおりの「大ぶり」なトラックではなく、むしろ脱力した、おしゃべりの延長のような楽曲構成になっていて、はじめてどんぐりずを聞いた人が「これが流行るのか」と戸惑いつつ、3周目には口ずさんでしまう、というあの仕掛けがすでに完成されていました。
それ以外にも「nadja」「マインド魂」「IT’S YA BIRTHDAY」「snw」「dawn dance」と、コンスタントに楽曲をリリースしていて、楽曲ごとに「どんぐりずの世界の別の方角」を見せてくれます。マインド魂は特に内省的な歌詞で、ファンの間では「いちばん心臓に近いどんぐりず」とも語られている楽曲です。
私が音楽ブログ運営者として聴き直して感じるのは、彼らはバズひとつで終わるユニットではなく、楽曲ごとに違う引き出しを開けてくる、本格派のソングライターチームだということです。
どんぐりずのライブは?フジロック深夜入場規制と全国フェス出演
どんぐりずがもうひとつ強烈な存在感を見せるのが、ライブの現場です。
初出演となったフジロックフェスティバルでは、深夜帯のステージにも関わらず入場規制がかかり、お客さんが会場に入りきれない、という現象が発生しました(出典:Wikipedia「どんぐりず」・2026年5月確認)。フジロックの深夜枠は、本来コアなファンや、夜更かしの覚悟がある人がふらりと立ち寄るような時間帯です。そこで入場規制になるというのは、彼らの楽曲が完全に「ライブで体験するべきユニット」として受け止められていることの証拠です。
その後も Brightness Open Air 2022、FUJI & SUN ’22、POP YOURS、森、道、市場 2022、FFKT 2022、YOKOHAMA URBAN SPORTS FESTIVAL 2022、しゃけ音楽祭 2022、SONICMANIA、SUMMER SONIC 2022、ONE PARK FESTIVAL 2022、ODD BRICK FESTIVAL 2022、りんご音楽祭と、ジャンルを問わずあらゆる屋外フェスに出演し続けています。
これだけ多様なフェスに呼ばれているということは、「HIPHOPファン専用」でも「インディーロックファン専用」でもなく、ジャンルを越えてアルゴリズム的に拡散していった結果、現場で会いたい人がジャンル横断で集まっている、ということです。これはZ世代以降の音楽消費の特徴で、彼らはその波にかなり早い段階で乗ったユニットだと言えます。
私の感覚では、どんぐりずのライブの強さは、サウンドの完成度というよりも「会場の空気の作り方」にあります。MCのゆるさ、楽曲の入り方、煽りのなさ、それでいて気がついたら全員身体が揺れている、というあの感じは、ふつうのライブバンドでは出せないものです。
どんぐりずの森とチョモの関係は?早口坊主と変態毒キノコの担当
どんぐりずを構成する2人について、もう少し踏み込んでおきます。
ひとり目の森は、担当表記が「早口坊主」となっています。文字どおり、楽曲のなかで早口のラップを担当することが多く、低めの声でリリックを淡々と詰めていくスタイルです。SNSのプロフィール写真も独特で、彼自身のキャラクターが楽曲のシリアスな部分を担っていることが多い、という印象です。
もう一人のチョモランマ(チョモ)は、担当が「変態毒キノコ」。命名のセンスからしてどんぐりずらしいですが、こちらは楽曲のなかでウィスパーボイスや裏声、ふざけたフックを担当することが多く、ふたりを聞き比べると、声の役割分担がしっかり違うことが分かります。「NO WAY」のあのウィスパー気味のサビは、おおむねチョモ側の音色です。
ふたりの関係性は、前述のとおり実家が徒歩数秒の距離だった幼馴染です。子どもの頃からの距離感がそのまま音楽に反映されているのが、どんぐりずのいちばんの強みで、ヒップホップ的な「クルー感」とも、バンド的な「同窓会感」とも違う、独特の空気がトラックの隙間に流れています。
ふたりの本名・年齢などは、公的にはほぼ非公開のスタンスを取っているため、本記事でも断定はしません。「森」と「チョモランマ」というユニット内での呼称が、現状では彼らの公的なアイデンティティだと受け止めるのが妥当です。
どんぐりずの現在は?ビクター所属と2026年の活動の今
2026年5月現在のどんぐりずは、ビクターエンタテインメント傘下のレーベルに所属しながら、コンスタントに楽曲リリース・MV公開・フェス出演を続けています(出典:ビクターエンタテインメント「どんぐりず」プロフィール・2026年5月確認)。
近年は、HIPHOP/インディー系のレーベルやアーティストとのコラボレーションも増えていて、シーンの中心人物として周辺アーティストを巻き込みながら、ジャンルの境界線をさらに曖昧にしていっている印象です。Spotifyの再生数も伸び続けていて、彼らのプレイリスト「どんぐりず的なやつ」を聞いていると、Z世代のリスニング傾向がそのまま反映されているのが分かります。
ライブ活動でも、ワンマン公演・対バン公演・フェス出演を並走させていて、2026年も春から夏にかけて複数のフェスのラインナップに名前が出ています。彼らのライブが現場の人を吸い寄せる力は、フジロック深夜帯の入場規制以降、衰える兆しが見えません。
私が記事を書きながら最も注目しているのは、どんぐりずが「TikTokバズ系」というカテゴリに収まることなく、ライブの現場で20代〜30代のリスナーをじわじわと固定ファン化していっている、という点です。SNSの数字だけのアーティストは2〜3年で消えていく一方、現場で人を呼べるアーティストは長く残ります。どんぐりずは明らかに後者で、彼らがこの先5年、10年でどんな立ち位置に立っているのか、楽しみに追いかけていきたいユニットです。


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